国土交通省は、不動産の売買や賃貸におけるネット取引の解禁を検討する有識者会議を開いたとのことです。
不動産業者に義務付けている重要事項の説明を対面からネット通話で代替えできるようにする他、代金や支払い方法などを記載した契約書を電子メールで送ったりすることなどが大きな改革点となっています。
国交省は、5月にネットを活用した不動産の模擬取引を実施して効果と副作用の検証を行うこととし、6月中にもネット取引解禁の方向性を出し、年内に結論をまとめるとしていますが、調整についてはすでに難航する気配を見せています。
ネット取引推進派先鋒の楽天は、ネット取引解禁により、地方や海外など遠方から転居する人が不動産業業者の店舗に出向く負担を抑えることができるなど消費者の利便性が高まることによって不動産取引が活性化すると主張しています。
対する不動産業界からは、「消費者保護のために対面による説明は必要。」「賃貸の場合はクレームやトラブルの発生も考えられるので、本人と会って話す必要がある。」など、慎重な意見が多数出ています。
不動産のネット取引が解禁されれば、これに対応するためのシステム投資や社員教育など、不動産会社に負担が発生することは確実になります。
不動産業者は中小零細企業が多数を占め、こうしたネット取引に対応する余裕がないことも解禁に消極的な理由の一つとなっているようです。
もちろん従来通りの取引を続けるという選択肢もありますが、消費者の動向によっては大きく売り上げを減少させる可能性もあり、近い将来、対応に迫られることになる可能性も低くはありません。
したがって、対面取引の重要性というよりは、ネット取引導入にかかる経費、売上の減少を懸念する向きが多いようにも思えますが、あくまでも諸費者第一の姿勢であって欲しいものです。
対面取引からネット取引解禁というと、薬の販売が記憶に新しいところですが、不動産と薬とでは金額も頻度も全く異なるため単純な比較はできません。
消費者の利便性を高めるとともに、取引の安全を確保する仕組みをいかに作るかが大きなポイントとなることはいうまでもありません。
不動産のネット取引解禁は不動産業界の構造自体も変えかねない可能性もあり、今後の動向が注目されるところです。